研究テーマ:コンテンツ開発効率化の試み |
長岡技大では、数年前からeラーニングにより、提携校との間で授業配信を行ってきました。従来は、収録したビデオを編集ソフトを使用して教材を作成していましたが、専任の担当者が時間をかけておこなっていました。(90分の教材の作成に2倍半くらいの時間をかけていた。) 将来的に、多数の教材を短時間で作成する事が要求されるようになることを考えると、従来のやり方では限界が来る事が予想されました。 既存のオーサリングツールを調査した結果、ビデオ映像に同期してPowerPointの切り替えタイミングを記録しておき、再生時にPowerPointの表示切り替えを行うツールばかりでした。 本学のスタジオ収録によるコンテンツ開発においては、つまずいての撮り直しや、最後まで収録が行われた後の見直しで、撮り直したいという場面もしばしば発生しました。 従ってこれらのツールを使用すると、つまずいた場合の撮りなおし時には、最初から撮りなおすか、とりあえずやり直し映像を撮っておいて、あとで編集するかしかありませんでした。これでは、教材作成の手間は軽減されません。 このような状況に鑑み、ツールを自主開発することにし、2年間に及ぶ試行錯誤の結果、表題のオーサリングツールの開発にいたりました。 1.製品概要: Microsoft社製PowerPointと映像が同期した映像配信形コンテンツを作成する。 2.製品の特徴: (ア) プレゼンテーションを「パッ」と撮ってコンテンツが完成。すぐにWeb配信が可能です。 パソコンにデジタルビデオカメラ(又はWebカメラ)を接続して、PowerPointのスライドショーを表示しながら、発表者(説明者)の映像をパソコンで収録することで、映像と説明資料が同期したコンテンツがその場で出来上がります。出来たコンテンツはWeb配信やCD配布はもちろんのことeラーニングシステム(LMS)にも登録が可能です。(SCROM1.2対応) (イ) スライドの差替え、映像の一部再収録が簡単に行えます。(他の同種ソフトにない機能です。) 収録した映像は、PowerPointのスライド単位に、スライド切り替え直後に保存されます。この特性を利用して、スライドの差換えや、映像の再収録などを容易に行える機能を用意しています。従って、つまづいたときのやり直しや、いったん終了した後での部分的な撮りなおしも簡単に行えます。また、撮りなおし時には、自動的に前の映像に置き換えられますので、後での編集が不要になります。 (ウ) 「だれ」でも「簡単」に「すぐ」にコンテンツ作成が完了します。 コンテンツ作成に関する専門知識や専任スタッフは不要です。プレゼンテーションを行う本人が、準備・プレゼンテーション・後処理を一人で行えます。PowerPointを使える人なら、誰でも簡単にできる操作です。 3.製品の活用場面(詳細はパンフレットにて) (ア) ここ数年、顧客情報流出や相次ぐ企業不祥事など、情報セキュリティ教育やコンプライアンス教育等、早急にかつ全職員に対して周知徹底を行う必要がある機会が非常に多くなってきています。また、事業内容そのものに対しても、きめ細かな対応が要求される状況になっています。 (イ) 一方で、多様な雇用形態(社員、嘱託、パート、アルバイト)・勤務形態(交代制、フレックスタイム)や地理的な広がり(支店、営業所)などから全職員を一堂に集めて情報共有を行うことが非常に難しい状況になっています。 (ウ) 「PresentationAuthor」を活用することで、タイムリーに映像配信型コンテンツを作成でき、WebやCDによる配布で全職員への周知徹底が可能になります。 (エ) さらにeラーニングシステムとの組合せにより各職員のコンテンツ参照履歴確認などを行うことが可能となり、周知徹底の状況を集中して管理する事ができるようになります。 (オ) その他にも、講演会、研修会、社長講話、自社商品マニュアル、内定者研修/新人研修および高等教育機関における授業コンテンツ作成など広範な活用が可能です。 4.開発経緯 (ア) 長岡技大では、数年前からeラーニングにより、提携校との間で授業配信を行ってきました。従来は、収録したビデオを編集ソフトを使用して教材を作成していましたが、専任の担当者が時間をかけておこなっていました。(90分の教材の作成に2倍半くらいの時間をかけていた。) 将来的に、多数の教材を短時間で作成する事が要求されるようになることを考えると、従来のやり方では限界が来る事が予想されました。 (イ) 既存のツールを調査した結果、ビデオ映像にPowerPointの切り替えタイミングを記録しておき、再生時にPowerPointの表示切り替えを行うツールばかりでした。これだと、つまずいた場合の撮りなおし時には、最初から撮りなおすか、とりあえずやり直し映像を撮っておいて、あとで編集するかしかありませんでした。これでは、教材作成の手間は軽減されません。案外撮りなおしは多いのです。また、最後まで収録が行われた後の見直しで、撮り直したいという場面もしばしば発生します。 そこで、ツールを自主開発することにしました。 (ウ) コンセプトは以下の通りとしました。 ① 専任の担当者が不要。講師が自分ひとりで教材作成ができること。 ② ITリテラシーのそれほど高くない人でも使えること。(PowerPointが使える程度) ③ つまずいた時の取り直しや、収録後の再収録が容易で、編集作業がいらないこと。 ④ 簡単な操作で、CD化、WEB掲載、eラーニングコンテンツ登録ができること。 ⑤ eラーニングコンテンツの標準的な規格であるSCORMに準拠していること。 (エ) 約2年をかけて開発。 ① プロトタイプの作成・評価に1年。(2004年度) ② 本格使用版開発・評価に1年。(2005年度) ③ 2005年12月に13件の特許申請。 ④ 出来上がったツールは学内で試用・評価すると共に、学外の協力者に試用・評価してもらった。(2006年) (オ) 試用・評価で見えてきたこと ① 既存のツールを使って挫折していた人が、このツールでは問題なく使用できたなど、当初設定したコンセプトは実現できたこと。 ② スライド・映像の差換え・追加機能、章・節編集機能を装備した結果、ナレッジマネージメントのツールとしての可能性が見えてきたこと。 |
研究テーマ:インストラクショナルデザイン(ID) |
1.当部門のテーマ ① インストラクショナルデザインの研究・深耕 ② コンテンツ作成への適用方法の研究・実践 ③ インストラクショナルデザインの啓蒙・普及 ④ インストラクショナル・デザイナーの育成 2.インストラクショナルデザインとは? 教育プロダクトをシステム的に企画、設計、実施、評価する手法である。 米国企業では15年ほど前から注目されており、CBT(Computer Based Design)の開発手法として導入された。 IBM社SATE(System Approach to Education)の確立がきっかけとなり広まった。 (IBM社はこれにより教育費用を12%削減することができた。) IBM社におけるIDのステップは以下の通りである。 ① 分析 (Analysis) ② 設計 (Design) ③ 開発 (Development) ④ 実施 (Implementation) ⑤ 評価 (Evaluation) (出典 インストラクショナル・デザイン入門、東京電機大学出版局) 一方、最近のIDの捉え方として、日本eラーニングコンソーシアムが2004年に行った勉強会「eラーニング・ファンダメンタル」で使われた教本「詳説インストラクショナルデザイン」の中で使われている定義として、以下のように表現されている。 「研修の効果と効率と魅力を高めるためのシステム的なアプローチに関する方法論を集めたもの」 (鈴木,2004,P0-10) 3. 研修デザインにおけるID の役割 当初は研修教材の開発が対象であったが、徐々に拡張され組織のパフォーマンスを上げる為の方法論に発展して来た。 (広義には) 経営戦略実現のための人材開発を行う。 効果ある研修とするために以下を実施する必要がある。 ① 経営戦略に基づく人材開発を考える。 ② 教育・研修のニーズを的確に捉えて研修設計する。 ③ 研修目的・環境にあった研修設計を行う。 ④ 集合教育かeラーニングかを選択する。 (狭義には) ⑤ 効果的な教材開発を行う ※そして、これを中心になって行う専門家が必要であり、これらの人たちを「インストラクショナル・デザイナー」(IDer)と呼んでいる。 4.紹介コンテンツ・論文等 (1)コンテンツ ① インストラクショナル・デザイン概論(2005年3月) ② インストラクショナル・デザインによるeラーニングコンテンツ開発(2005年3月) (2)実践 ① ID理論に基づく新教材の効果測定(2005年3月) ② アイネットGP コンテンツ作成支援(2005年8月〜2006年3月) |