長岡技術科学大学
   
 

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島田英昭,政倉祐子,永井聖剛,熊田孝恒,関喜一,奈良雅子 & 北島宗雄(2005)

島田英昭,政倉祐子,永井聖剛,熊田孝恒,関喜一,奈良雅子 & 北島宗雄. (2005). マルチメディアを利用した理解しやすい災害避難マニュアルのデモ版の作成とその心理学的基盤. 第3回生活支援工学系学会連合大会. XXX-XXX

 

マルチメディアを利用した理解しやすい災害避難マニュアルのデモ版の作成とその心理学的基盤

我々は、障害者の災害時における行動の自己決定を支援するために、理解しやすい防災避難マニュアルの作成を行っている。従来より、理解しやすい情報提示の試みは行われている。しかし現状では、多くの障害者にとって理解しやすい情報提示を実現するためには、次のような問題が生じている。(a)特定の障害を想定してコンテンツが作り込まれているため、個人特性に合わせてコンテンツを選択したり、部分的に追加・変更・削除したりすることが困難である。(b)認知・知的障害者への対応策は十分ではない。

我々は、これらの問題を解決するために、マルチメディアを利用したマニュアルを作成している(Fig. 1)。マニュアルは、画像・字幕・ナレーション・手話・画像上の注意喚起効果からなる。このマニュアルにおいてもっとも重視している点は、視聴覚障害者、認知・知的障害者を含めた多くの対象者の個人特性・ニーズに、従来以上に細かく応じることである。このために、情報提示の仕様、情報提示方法に関する心理学的基盤の2点を新たに提供する。

災害避難マニュアルのスクリーンショット

【情報提示の仕様】
細かな個人特性に応じるためには、提示情報を容易に選択・追加・変更・削除できるようにする必要がある。たとえば、聴覚障害者には手話や字幕を提示する必要がある。また、認知・知的障害者には理解が行いやすいように変換された情報を提示する必要がある。我々は、そのような情報提示が可能であるような情報提示システムの仕様を、一般的な手順マニュアルを想定して提案した。そして、マルチメディア言語SMILを利用することで、コンテンツの容易な選択が技術的に可能であることを示した[1]。

【心理学的基盤】
認知・知的障害者の個人特性に応じるためには、特性に応じてコンテンツを適切に選択する方法を確立する必要がある。我々は、(1)注意喚起効果と(2)コンテンツの具体化について、心理学的な検討を行っている。

(1)注意喚起効果:
注意喚起効果は、マニュアルにおいて提示される画像上で、重要な部分に注意を誘導することを目的としている。Fig. 1で示されている長方形の枠は、注意喚起効果の例である。従来、重要な情報についての理解を促す注意喚起効果は、ある課題における反応時間や眼球運動といった客観的な指標を測定することにより検討されてきた。しかし、ある注意喚起効果によって反応時間の短縮が認められ、かつ眼球運動測定により注意が向けられていることが示されたとしても、その注意喚起効果が利用者(見る人)に不快感や嫌悪感を与える場合には、マニュアルに実装する注意喚起効果として不適切である。そこで本研究では、上述した行動指標測定に基づく客観評価のみではなく、注意喚起効果に対する不快感や嫌悪感といった、利用者の主観的な判断に基づく主観評価についても検討している。また、マニュアルの理解に有効な注意喚起効果は、障害のタイプなど、個人特性によって異なることが考えられる。そのため、各障害の注意喚起特性を把握し、適切な注意喚起効果を同定しておく必要がある。そこで本研究では、客観評価、主観評価ともに高い注意喚起効果について、障害のタイプなどの個人特性ごとの整理を試みている。

(2) コンテンツの具体化:
従来のマニュアルは、災害時の行動が具体的でなく、分かりにくい。たとえば、「高台に避難する」という行動は、「○○は高台である」という知識があってはじめて役立つ。知識の欠如などにより知識が利用できない対象者には、「△△にいる場合、○○に避難する」と具体的に情報を提示することが必要となる。我々は、災害時の知識運用のメンタルモデルを表現することで、個人特性に応じて提示情報を適切に選択する方法を提案している[2]。

【引用文献】
[1] 島田, 北島: SMMAPS: 障害者の個人特性に応じた情報提示システム; ヒューマンインタフェースシンポジウム2005発表論文集, 2, pp.719-724 (2005).
[2] 島田, 北島: 災害避難のメンタルモデル:認知・知的障害者の認知特性に合わせた災害準備情報の教示法; 日本認知科学会第22回大会発表論文集, pp.392-393 (2005).

【付記】
本研究は、文部科学省科学技術振興調整費「障害者の安全で快適な生活の支援技術の開発−認知・知的障害者の理解特性に合わせた情報提示技術の開発」(平成16年度〜18年度)の一環として行われた。本研究の詳細は、下記サイトにて公開している。
http://unit.aist.go.jp/humanbiomed/ projects/aist_rehab_joint/index.html

 

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